何を読むか、困った時には重松さん。アベレージヒッターです、ってなんかうまく褒めていないような・・・。
『見張り塔からずっと』タイトルからは、何のことだかさっぱりです。装丁を見て、「家庭やら夫婦の話なんだろうな」くらいに思って読みました。
発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語-。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。
甘く見てました・・・。重いです。ずしっと。
それぞれの登場人物の人生が、自分の理想から段々とずれた方向へ流れてしまう。それが現実でも、現実を受け入れられなかったり、逃避したりしてしまう。普通の小説家なら、こんな抑揚の無い物語にはしないんじゃないか。なんせ、単純に考えると「退屈な」話。
ただ、恐ろしく現実的で、「ありそう」な設定。そして、重松さんは相変わらずリアリティに溢れているというかなんというか・・・。
この本の解説とあとがきには、重松さんが作家になる前にやっていた仕事のことが書かれていますが、やっぱりその経験は大きいんだと思う。私が好きな作家さんの中には、好きは好きでも「どうもその会話はありえんな・・」ということがよく出てきます。でも、重松さんの作品にはそれが出てこない。
あらためて重松さんのすごさを思い知らされたような、そんな感じ。
ただ、「面白さ」を求めるなら、星の数は-1か2くらいに見ておいて間違いないような。とにかく重いし、暗い雰囲気が漂っているので、沈んでいる方は読まない方がいいかも・・。
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